- 松並 研作
【東大関連ベンチャーはコロナをどう乗り越える!?③】本郷の食文化を守りたい~株式会社LeadX
「東大関連ベンチャーはコロナをどう乗り越える!?」の第3回目の企画として、2021年2月8日に株式会社LeadXの代表取締役社長・前田将太氏にお話を伺った

株式会社LeadXの基本概要

設立:2020年2月
従業員数:3名(2021年1月末現在)
企業ホームページ:https://www.leadx.co.jp/
360°動画から本郷の飲食店支援へ。根源は社会貢献したいという思い。

大学ではラクロス部だった前田氏が株式会社LeadXを作ったきっかけは、東大のアントレプレナーシップ・チャレンジに部活の同期と出たことだった。そこで、観光地やホテルなどに足を運んでもらうために360°動画を制作することを提案し、見事優秀賞に選出された。起業後は、360°動画だけでなく、小学生向けロボットプログラミング教室の開講なども行い、2020年の3月頃に飲食店の応援サービスを始めることを決めたそうだ。
360°動画制作と飲食店の応援サービスではかなり領域が異なるように思われるが、実際に前田氏は領域にこだわりはないという。しかし、それらの根源には社会貢献したいという株式会社LeadXの思いが共通してある。飲食店の応援サービスについては、本郷という身近な課題解決をしたいという意欲から生まれたものだ。こうして、月額定額制でランチを楽しめるサービス「Gocci」を2020年6月から、ユーザー・飲食店・スポンサーの三者を繋ぐプラットフォーム「Gocci.me」をリリースした(注:これらのサービスは2021年2月末をもって終了するそうです)。
目の当たりにしてきた本郷の飲食店の現状
本郷の飲食店応援サービスを実施するにあたって、株式会社LeadXのメンバーは飲食店の方々と接する機会を数多く持ってきた。その過程で、改めて飲食店がどれほど苦しい状況なのかを知ることができたそうだ。東大近辺の飲食店は100店舗ほどあると推測されるが、学生や東大職員が常連となっている店も多いという。授業のオンライン化なども進んだことから、東大のキャンパス内の人口が急激に減ってしまい、その結果飲食店も大打撃を受けてしまっている。実際に、Gocci関連のサービスを行っている間にも、閉店した飲食店が出てきてしまい、前田氏らは苦い思いをしてきたそうだ。
これらは、コロナの影響によるものであるが、飲食店そのものが定常的に抱えている問題があることも前田氏は指摘した。飲食店はもともと薄利な業界であるが、その多くは原価と固定費が高く、利益率が非常に低い中で経営しているそうだ。コロナ禍の飲食店の救世主としてUber Eatsなどによるデリバリーサービスがあるが、本郷の飲食店はそのようなものを始める余裕すらない。コロナが終焉しても、新しいサービスを始められない飲食店が多いことが予想されるため、抜本的な対策などが必要なのかもしれない。
飲食店を守るためにはユーザー・飲食店双方の協力が必要

「Gocci」や「Gocci.me」のサービスは最終的にはメディアにも取り上げられるなどの知名度を獲得したが、そのかげには株式会社LeadXの不断の努力があった。まずは、「Gocci」のサービスを引き受けてもらえる飲食店を獲得してきた。前田氏らがもともとお世話になっていた飲食店を始め、計80~100店舗に足を運んで飛び込み営業をしてきたそうだ。飲食店の多くは、多忙を極めており、新たなサービスを受け入れる余裕がないことから、いくつかの飲食店からは門前払いをされてしまったという。その一方で、協力的な飲食店も多かったそうで、前田氏曰く、これまで東大と飲食店の間で築かれた関係があったからとのことだ。最終的には40店舗ほどに許可してもらえたという。
飲食店を確保した後は、ユーザーを確保するための取り組みをしてきた。オンラインでの宣伝などもおこなってきたそうだが、最終的には飲食店に行く人を増やす必要があるため、実際にキャンパスにいる人にアプローチするのが効率的だとなったらしい。守衛に許可を得たうえで、キャンパス内でサービスを宣伝するカードを配ることで、最終的には600名ほどの人が「Gocci.me」のサービスに登録したそうだ。
ポストコロナ社会の本郷の飲食店は?
インタビューでは、ポストコロナ社会における本郷の飲食店の展望も伺った。もし、コロナ終焉後もオンライン授業などが継続されて、キャンパス内の人数が減る場合は、本郷近辺の食の需要は減ることになるが、そうではない限り、需要はまたもとの状態に戻るはずである。学生や教職員の食事形態は、学食・コンビニ・キッチンカーなどもあるが、飲食店の需要も相当ある。そのようなことから、本郷近辺の飲食店の数は最終的にはあまり変わらないのではないかと前田氏は見解を示した。コロナ禍で閉店する飲食店が続出するかもしれないが、新たな飲食店がそのうちできる可能性もある。しかし、今回のような状況が再び来る可能性を考えると、今まではマーケティングを気にしなくても良かった飲食店も、変えていく必要があるかもしれないと述べた。
株式会社LeadXの今後
コロナ禍という一番大変な時期に、飲食店を救うために挑戦してきた株式会社LeadX。今後も、事業などは変えつつも挑戦し続けていくそうだ。予測不可能が多い今は、ビジネスモデルを成り立たせるのが難しいことがあったそうだが、ポストコロナ社会では状況も変わってくるであろう。
社会貢献という大きな使命のもと、株式会社LeadXは今後も活動していく。
編集後記
今回は、社会貢献したいという思いのもと、本郷の飲食店を守るべく活動してきた会社の様子を伺うことができました。ご多忙の中、私たちからのインタビューを快く引き受けてくださり、かつ貴重なご意見をくださった、株式会社LeadXの前田氏、及び関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。
なお、私たちは東大関連ベンチャーを中心に、これからもインタビューを続けて現場の声を記事にしていきたいと思います。ご興味のある方、少しでもご協力いただける方は是非我々のチームにご連絡いただけると幸いです。詳しくはこちら。
※東大関連ベンチャーとは、東大の在校生または卒業生などの関係者が創業したベンチャーのことを意味しています。東京大学が公式で認めている企業という意味ではありませんので、ご了承ください。